1. 【御利益】
菊理媛神(ククリヒメ)は、物事を整え、結びつける力が非常に強い神様です。
- 縁結び・良縁成就
- 男女の仲を取り持つだけでなく、仕事上のパートナーや友人など、人生に必要な「人との縁」を結びます。
- 復縁・和合
- 喧嘩や誤解で離れてしまった縁を修復し、再び結び直す調停の力があります。
- 悪縁切り
- 新しい良縁を入れるスペースを作るため、不要になった腐れ縁や悩みのもとをスパッと断ち切る決断力を授けます。
- 商談成立・事業繁栄
- 異なる意見を持つ者同士の間に入り、話をまとめ上げることから、交渉事やビジネスの成功を守護します。
2. 【概要と由来】
菊理媛神(ククリヒメノカミ)は、日本神話において非常に重要な局面で登場する、謎多き女神です。
その名は「括る(くくる)」に由来するとされ、バラバラになったものを一つにまとめ上げる、あるいは「聞き入れる(きくり)」として、人々の願いや言葉を聞き届ける存在と解釈されています。
歴史的には、石川県・白山(はくさん)を御神体とする「白山信仰」の中心的な神様であり、加賀の国(現在の石川県南部)の一の宮として、古くからこの地の人々に深く崇敬されてきました。天と地、あの世とこの世、そして人と人とをつなぐ、シャーマン(巫女)的な性格を持つ神秘的な女神です。
3. 【詳細解説】
別名・別称
- 白山比咩神(シラヤマヒメノカミ)
- 菊理媛命(ククリヒメノミコト)
特徴・シンボル
菊理媛神は、しばしば「白い布」や「赤い糸」を持つ姿、あるいは白山そのものを象徴する姿で描かれます。画像にあるように、赤い糸で縁を手繰り寄せる姿は、彼女の「むすび」の力を視覚化したものです。
性格は、ただ優しいだけではありません。迷いの中にいる時には、竹を割ったようにスパッと進むべき道を示し、時には不要なものを切り捨てる厳しさと優しさを併せ持った「姉御肌」な一面があるとも言われています。
神話・エピソード:黄泉の国での仲裁
菊理媛神の最大の見せ場は、『日本書紀』の一書に記された「黄泉の国(よみのくに)」でのエピソードです。
国生みの夫婦神であるイザナギとイザナミ。妻のイザナミが亡くなり、夫のイザナギは彼女を連れ戻そうと死者の国(黄泉の国)へ向かいます。しかし、そこで見たのは変わり果てた妻の姿でした。 恐怖して逃げ出したイザナギと、怒り狂って追いかけるイザナミ。二神は「黄泉比良坂(よもつひらさか)」で激しく口論になります。
この絶体絶命の修羅場に現れたのが、菊理媛神です。 彼女はイザナギに対して「何か」を耳打ちしました。すると、あれほど怒り動転していたイザナギは、その言葉を聞いて感心し、納得して怒りを鎮め、その場を穏やかに収めて帰っていったのです。
菊理媛神が一体何を言ったのか、それは神話には記されていません。しかし、この「一言で争いを鎮めた」という実績から、彼女は最強の**「調停者」であり、「対立する二つのものを繋ぐ神」**として崇められるようになりました。また、あの世(イザナミ)とこの世(イザナギ)の間に立ったことから、イタコ(口寄せ)の祖神ともされています。
4. 【金沢での関連寺社・スポット】
金沢およびその近郊には、菊理媛神の強大なパワーを感じられるスポットが点在しています。
白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)
金沢市のお隣、白山市に鎮座する全国約3,000社ある白山神社の総本宮です。
金沢市内中心部からは車や電車で40分ほどの距離にありますが、金沢観光とセットで訪れるべき最重要スポットです。 神聖な空気が漂う表参道や、大木に囲まれた境内は、まさに「神域」と呼ぶにふさわしい場所。
毎月1日には「おついたちまいり」として多くの地元民が訪れます。
- 住所:石川県白山市三宮町ニ105-1
- アクセス:北陸鉄道石川線「鶴来駅」よりバス、またはタクシー
金沢市内の白山神社
かつて「加賀の国」であった金沢には、地域の守り神として多くの「白山神社」が存在します。
例えば、ひがし茶屋街の近くにある宇多須神社(うたすじんじゃ)などは、加賀藩主・前田家の崇敬も厚く、白山信仰とも関わりの深い古社として知られています(※主祭神は異なりますが、地域の精神的支柱として関連があります)。
街歩きの中で「白山神社」という扁額を見つけたら、そこには菊理媛神が祀られ、地域の人々の縁を見守っています。
金沢 寺社仏閣めぐり 