1. 【御利益】
ニギハヤヒが持つ「十種神宝(とくさのかんだから)」の霊力や、国譲りの神話に基づき、以下の御利益が篤いとされています。
- 病気平癒(死者をも蘇らせると伝わる強力な浄化の力)
- 心願成就(強い意志で物事を成し遂げる)
- 勝運・立身出世(リーダーシップを発揮し、組織を導く)
- 厄除け・開運(古い因縁や執着を断ち切り、新しい流れを呼ぶ)
2. 【概要と由来】
「天孫降臨」より先に地上へ降りていた、ミステリアスな皇祖神。
饒速日命(ニギハヤヒノミコト)は、一般的に知られる「天孫降臨(ニニギノミコト)」よりも前に、天照大御神(アマテラス)の命を受けて天磐船(あめのいわふね)に乗り、河内国(現在の大阪府周辺)に降臨していたとされる神様です。
古代の有力豪族・物部氏(もののべし)の祖神としても知られ、武力と祭祀の両面で強大な力を持っていました。
神武天皇が東征を行った際、ニギハヤヒは既に大和地方を治めるリーダー的存在でしたが、天神としての証を示して神武天皇に協力し、平和的に国を譲ったとされています。
このことから、「潔さ」や「大局を見る目」を持つ神として尊崇されています。
3. 【詳細解説】
別名・別称
天照国照彦火明櫛玉饒速日命(あまてるくにてるひこあめのほあかりくしたまにぎはやひのみこと)
※「アマテル(天照)」という名が含まれていることから、本来の太陽神、あるいは男神としてのアマテラスではないかという説も存在します。
特徴・シンボル
- 凛とした美男神:
そのエネルギーは非常に鋭く、涼やか。
現代風に言えば、シュッとした高貴な顔立ちのカリスマ的な男性神としてイメージされることが多いです。 - 十種神宝(とくさのかんだから):
アマテラスから授かったとされる10種類の宝物。
「死人をも生き返らせる」ほどの強力な呪力を持つとされ、魂の鎮魂や浄化の儀式に使われます。
神話・エピソード:勇気ある「手放し」の物語
ニギハヤヒを語る上で欠かせないのが、神武天皇との対面シーンです。
当時、ニギハヤヒは大和の豪族・長髄彦(ナガスネヒコ)の妹を娶り、その地の王として君臨していました。
しかし、後からやってきた神武天皇もまた「天の神の子」であることを知ります。
ここでニギハヤヒは、義兄であるナガスネヒコが抵抗を続けるのを諌めますが、聞き入れられませんでした。
最終的に彼は、私情(家族の縁)や自らの地位への執着を捨て、より大きな「国の安寧」のために神武天皇に帰順することを選びます。
この神話は、「物事を俯瞰し、不要な執着を手放すことで、より良い未来(調和)が手に入る*というメッセージを私たちに伝えています。
現状に行き詰まりを感じている時、ニギハヤヒの決断力は大きな助けとなるでしょう。
※一説には、謎多き女神「瀬織津姫(セオリツヒメ)」の夫神であるとも囁かれています。
歴史の表舞台から隠された者同士、深い絆で結ばれているのかもしれません。
4. 【金沢での関連寺社・スポット】
金沢市内にも、このニギハヤヒを主祭神として祀る、知る人ぞ知る神社が存在します。
神田神社(かんだじんじゃ)
金沢市神田1丁目に鎮座する神社です。
- 御祭神: 饒速日命(ニギハヤヒノミコト)
- 解説: 古くからこの地(旧神田村)の産土神としてニギハヤヒ一柱を祀っていた歴史あるお社です(明治期に白山社を合祀)。
住宅街の中に静かに佇んでいますが、御神木の大ケヤキが素晴らしいエネルギーを放っています。
金沢中心部からも比較的近く、ニギハヤヒと直接繋がれる貴重なスポットです。 - 住所: 石川県金沢市神田1-15-20
尾山神社(おやまじんじゃ)との意外な縁
前田利家公を祀る金沢のシンボル「尾山神社」ですが、その創建前夜にはニギハヤヒ(物部氏)の影がありました。
加賀藩二代藩主・前田利長が、父・利家を祀ろうとした際、幕府への遠慮から公然と神社を建てることができませんでした。
そこで、富山県の「物部神社(祭神:ウマシマジまたはニギハヤヒ)」から神様を勧請するという名目で、金沢城の鬼門(卯辰山)に社を建て、密かに利家公を祀った(卯辰八幡宮)という歴史があります。
金沢の守護の裏側に、物部の神様の力が借りられていたのです。
尾山神社のステンドグラスや歴史については、当サイトの[尾山神社紹介記事]もぜひ併せてご覧ください。
全国の主な関連寺社
- 物部神社(島根県): 物部氏の総氏神とされる大社。
- 石上神宮(奈良県): ニギハヤヒが降臨したとも言われる地。起死回生のパワーで有名。
- 籠神社(京都府宮津市): 画像でも紹介されていた、元伊勢と呼ばれる古社。
- 物部天神社(埼玉県所沢市): 関東における物部信仰の拠点。
編集後記
ニギハヤヒ様、調べれば調べるほど「カッコいい」神様なんです。
一番手になれる実力を持ちながら、全体の調和のために一歩引く。
その潔さが、現代のリーダー論にも通じる気がします。
金沢の神田神社さんは、観光地の喧騒から離れた静かな場所にあります。
「最近、何かに執着して苦しいな」
と感じたら、ふらっと訪れて手を合わせてみてください。
きっと心がスッと軽くなるはずですよ。
金沢 寺社仏閣めぐり 
