1. 【御利益】
- 安産・子授け(新しい命を育み、無事に世に送り出す力)
- 夫婦和合(円満な家庭を築く守護)
- 商売繁盛(特に水産・飲食業など、水に携わる生業の繁栄)
- 五穀豊穣・登山安全(山の恵みと自然の平穏を守る)
2. 【概要と由来】
大山津見神(おおやまつみのかみ)は、日本神話において「山の総元締」とされる偉大な神である。
伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)の間に生まれ、山だけでなく「海」をも司る強大な生命力の象徴とされる。
京都府京都市東山区に鎮座する三嶋神社(通称:うなぎ神社)では、この大山津見神を主祭神として祀っている。
平安時代、後白河天皇の皇后が同社に祈願して高倉天皇を授かったという由緒から、古くより子授け・安産の神として篤く信仰されてきた。
特に「鰻」を神の使いとする全国でも極めて珍しい信仰形態を今に伝えている。
3. 【詳細解説】

別名・別称
- 大山積神(おおやまづみのかみ)
- 三嶋大明神(みしまだいみょうじん)
- 酒解神(さかとけのかみ)
特徴・シンボル
- 鰻(うなぎ):三嶋神社の象徴であり、水神の化身。
- 富士山:娘である木花之佐久夜毘売(このはなさくやひめ)が富士山の神であるため、その父神として高い神格を持つ。
- 三文字(さんもんじ):波を打つ「三」の字をあしらった神紋。
神話・エピソード
古事記において、大山津見神は非常に重要な役割を果たしている。
最も有名なのは、天孫ニニギノミコトが地上に降臨した際、自身の娘である木花之佐久夜毘売(このはなさくやひめ)と石長比売(いわながひめ)を差し出したエピソードだ。
また、三嶋神社における「鰻」の信仰には興味深い物語がある。
鰻は「水蛇」の代表とされ、泥の中でも力強く生き抜く生命力が、子宝を願う人々の希望と重なった。
かつて祈願中の人々は「鰻を食べることを断つ(断ち物)」ことで心願成就を祈ったといわれ、現在でも全国の鰻業者が供養や商売繁盛のために訪れる。
鰻が丸く円を描く姿は、命の循環や家庭の円満を象徴しているかのようである。
4. 【金沢での関連寺社・スポット】
金沢市内において、大山津見神(大山祇命)を祀る神社はいくつか存在するが、特に東山の歴史的な街並みに鎮座する[宇多須神社(うたすじんじゃ)]が代表的である。
宇多須神社(金沢市東山1丁目30-8)
京都の三嶋神社と同じく、金沢の「東山」という地名に縁があるのも興味深い点だ。
宇多須神社では大山祇命(大山津見神)を祭神の一柱として祀っており、厄除けや商売繁盛の神として地域の人々に親しまれている。
当サイト内の[宇多須神社]の紹介記事でも、その多才な御神徳について詳しく触れているので、ぜひ合わせてご覧いただきたい。
全国の大山津見神・三嶋信仰の重要拠点
大山津見神を祀る神社のネットワークは、主に「大山祇(おおやまづみ)系」と「三嶋(みしま)系」に分かれますが、どちらもルーツは同じです。
日本総鎮守:大山祇神社(愛媛県・大三島)
全国にある大山津見神を祀る神社の総本社です。
- 特徴: 瀬戸内海の大三島に鎮座し、古くから軍神・海神・山神として皇室や武将から篤く崇敬されてきました。
- 鰻との関わり: 直接的な「うなぎ神社」という呼び名はありませんが、ここが全ての三嶋信仰の源流です。
三嶋大社(静岡県三島市)
伊豆国一宮であり、源頼朝が深く信仰したことで知られる東日本最大の拠点です。
- 鰻の伝説: かつて境内の神池に住む鰻は「神の使い」として厳重に守られ、「三島の鰻を食べると神罰が当たる」という禁忌が江戸時代まで厳格に守られていました。現在、三島市が鰻の名所なのは、この信仰の裏返し(放流された鰻が肥えた等)という説もあります。
平柳星宮神社(栃木県栃木市)
近年、SNS等でも「うなぎの神社」として注目されているスポットです。
- 特徴: 境内に「なでうなぎ」という石像があり、鰻の身体をなでることで、運気を「うなぎのぼり」に上げ、厄除けや家内安全を祈願します。
「鰻」を神の使いとする理由の深掘り
なぜ全国で鰻が神使とされるのか、そこには共通する「水神」としての性質があります。
- 生命力の象徴: 泥の中でも生き、陸地を這ってでも水場を移動する力強さが、再生や生命の誕生(子授け)に結びついた。
- 水循環の使者: 大山津見神は「山の神」ですが、山に降った雨が川となり海へ流れる「水の循環」も司ります。川と海を行き来する鰻は、その循環を体現する存在と考えられました。
【編集後記(筆者感想)】
鰻を「食べる」のではなく「神の使い」として敬う信仰は、日本人と自然の不思議な距離感を感じさせてくれます。
京都の三嶋神社の絵馬に描かれた鰻たちは、どこか愛嬌があって、見ているだけでパワーをもらえそうです。
金沢でも、東山の宇多須神社を参拝する際に「この山の神様は、京都では鰻に守られているんだな」と思いを馳せると、いつもの散策が少し違った風景に見えるかもしれませんね。
金沢 寺社仏閣めぐり 