泣くことは恥じゃない。伊邪那岐命の涙から生まれた癒やしの女神「泣沢女神(ナキサワメ)」

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1. 【御利益】

ナキサワメは、生命の源である「水」と、感情の浄化である「涙」を司ることから、再生や生命力に関わる深いご利益があるとされています。

  • 延命長寿:生命力を活性化させ、健やかな長寿をもたらす。
  • 新生児守護・安産:新しい命の誕生を守り、その成長を促す(産湯の象徴)。
  • 祈雨(雨乞い):大地に恵みの雨をもたらし、五穀豊穣を助ける。
  • 心身の浄化・招福:涙を流すことでストレスや穢れを祓い、新しい幸運を呼び込む。

2. 【概要と由来】

ナキサワメ(泣沢女神)は、『古事記』において非常に情緒的な場面で登場する女神です。
その誕生のきっかけは、国産みの父神である伊邪那岐命(イザナギノミコト)の深い「悲しみ」でした。
最愛の妻・伊邪那見命(イザナミノミコト)を亡くしたイザナギが、その死を嘆き悲しんで流した涙。その涙が泉となり、そこから生まれたのがナキサワメです。

単なる「悲劇の女神」ではなく、枯れた大地に水が湧くように、悲しみの底から新たな「生命」や「再生」が生まれることを象徴する、慈愛と癒やしの神様として古くから信仰されています。


3. 【詳細解説】

別名・別称

  • 哭沢女命(ナキサワメノミコト)
  • 泣沢神

特徴・シンボル

ナキサワメを象徴するのは「井戸」や「湧き水」です。
名前にある「サワ(沢)」は湿地や水場を意味し、古代において井戸や水辺は神聖な場所とされていました。

また、葬儀の際に死者を悼んで泣く役割を担った巫女「泣き女(なきめ)」が神格化された姿とも言われています。

神話・エピソード:涙から生まれた再生の物語

神話において、ナキサワメの誕生は、日本最古の「愛と別れ」の物語の中にあります。

イザナギとイザナミは夫婦で多くの国や神々を生み出しましたが、火の神を生んだ際の火傷が原因で、妻イザナミは命を落としてしまいます。 愛する妻を失ったイザナギは、彼女の亡骸の枕元に這いつくばり、声を上げて泣き崩れました。

「愛しい妻の命を、たかが子供一人の命と引き換えにしてしまった」

そう嘆くイザナギの瞳から溢れ落ちた涙は、香久山(かぐやま)の麓の畝尾(うねび)という場所に落ち、そこから美しい女神が生まれました。これがナキサワメです。

このエピソードは、「涙を流す」という行為が単なる悲嘆ではなく、魂を鎮め、新しいエネルギーを生み出すための「禊(みそぎ)」の一種であることを教えてくれます。
ナキサワメは、私たちが辛い時に寄り添い、涙と共に古い感情を洗い流し、再び前を向く力を与えてくれる、優しくも力強い女神なのです。


4. 【金沢での関連寺社・スポット】

ナキサワメ(泣沢女神)を主祭神として単独で祀る神社は全国的にも珍しく、調査の結果、残念ながら金沢市内にナキサワメを主祭神とする神社の存在は確認できませんでした。

しかし、ナキサワメの父神であり、彼女を生み出した「伊邪那岐命(イザナギ)」を祀る神社や、生命の源である「水」に関わるスポットへ参拝することで、その御神徳に触れることができます。

金沢市内でのおすすめ参拝スポット

1. 須々幾神社(金沢市・八田町)

金沢市北部にあるこの神社は、主祭神の中にナキサワメの父である伊邪那岐命(イザナギ)と母である伊邪那見命(イザナミ)を祀っています。
実はこの神社、かつて近隣にあった「多賀神社(ご祭神:伊邪那岐・伊邪那見)」を大正時代に合祀(合併)した歴史を持っています。「多賀」の名は消えてしまいましたが、ナキサワメ誕生のきっかけとなった夫婦神の魂は、今もこの地で静かに守られています。

住所:石川県金沢市八田町丁57

須々幾神社(すすきじんじゃ)

2. 白山比咩神社(白山市・三宮町)

金沢のお隣、白山市にある加賀国一之宮。「しらやまさん」として親しまれるこの神社のご祭神は、白山比咩大神(菊理媛尊)ですが、併せて伊邪那岐尊(イザナギ)・伊弉冉尊(イザナミ)も祀られています。
ナキサワメが生まれた「涙」の原因となった、イザナギとイザナミの別れの物語。その二柱を仲裁したとされるのが菊理媛尊であり、神話的な繋がりが非常に深い場所です。金沢観光の際はぜひ足を伸ばしたいパワースポットです。

住所:石川県白山市三宮町ニ105-1

白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)

3. (参考)全国の有名なナキサワメを祀る神社

もし関西方面へ行かれる機会があれば、神話の舞台となった以下の神社が有名です。

  • 畝尾都多本神社(うねおつたもとじんじゃ):奈良県橿原市。イザナギの涙が落ちたとされる伝承地。「泣沢(なきさわ)の神社」として知られています。

編集後記

「泣く」という行為は、大人になるとどうしてもネガティブに捉えがちです。

でも、ナキサワメの神話を知ると、涙は「弱さ」ではなく、次へ進むための「浄化の儀式」なんだと気付かされます。

金沢は雨の多い街。
「弁当忘れても傘忘れるな」という言葉があるほどです。
雨(空の涙)が大地を潤し、美味しいお米や加賀野菜を育てるように、私たちの涙もまた、心の土壌を潤す大切な恵みなのかもしれませんね。

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