1. 【御利益】
- 良縁成就・縁結び(男女の縁だけでなく、友人、仕事などあらゆる良縁)
- 夫婦和合(愛妻家であり、多くの女神に愛されたことから)
- 病気平癒(医薬の神・少彦名命とともに国を巡ったことから)
- 商売繁盛・五穀豊穣(七福神の「大黒様」として財福を授ける)
- 産業開発・国造り(未開の地を開拓し、国を豊かにした実績から)
2. 【概要と由来】
「優しさと強さを兼ね備えた、日本神話きってのモテ男」
大国主命(オオクニヌシノミコト)は、出雲大社の御祭神として知られる、日本神話を代表するヒーローです。
「国津神(くにつかみ)」と呼ばれる地上の神々の中心的な存在であり、多くの試練を乗り越えて「葦原中国(あしはらのなかつくに=今の日本)」を平定しました。
有名な「因幡の白兎」の伝説で見せた慈愛の心と、スサノオノミコトから与えられた過酷な試練を乗り越える不屈の精神を持ち合わせ、最終的には天照大御神の孫(天孫)に国を譲る「国譲り」という偉業を成し遂げました。
その功績により、目に見えない神事(幽事)や人々の「ご縁」を司る神様として、今も厚く信仰されています。
3. 【詳細解説】
別名・別称
神話の中で成長するたびに名が変わるため、非常に多くの名前を持ちます。
- 大己貴命(オオナムチノミコト): 若き日の名前。
- 大物主神(オオモノヌシノカミ): 霊的な側面、和魂としての別名(奈良・大神神社の祭神)。
- 大黒様(だいこくさま): 神仏習合により、インドの神「大黒天」と同一視され、袋を担いだ福の神として親しまれています。
神話・エピソード
【因幡の白兎と兄弟たちの嫉妬】
オオクニヌシの優しさを象徴するのが「因幡の白兎」の物語です。
多くの兄神(八十神)たちが、美しいヤカミヒメへの求婚の旅の途中、皮を剥がれて泣いているウサギに出会います。兄たちは「海水を浴びて風に当たれ」と嘘の治療法を教え、ウサギをさらに苦しめました。 しかし、遅れて荷物持ちとしてやってきたオオクニヌシは、ウサギを憐れみ、真水で洗い蒲(ガマ)の穂綿で包むよう正しい手当てを教えます。救われたウサギは「ヤカミヒメはあなたを選ぶでしょう」と予言し、その通り彼はヒメと結ばれました。
【スサノオの試練と愛の成就】
ヒメに選ばれたことで兄たちの激しい嫉妬を買い、オオクニヌシは殺されそうになります。
母神の助けで何度も蘇生しますが、ついに逃れるために向かったのが、祖神スサノオノミコトのいる「根の国」でした。 そこで彼はスサノオの娘、スセリビメと運命的な恋に落ちます。スサノオは彼を試すため、「蛇のいる部屋」や「蜂のいる部屋」に寝かせるなど数々の難題を与えますが、スセリビメの助けと自身の知恵でこれらを突破。 最後はスサノオの宝(太刀と弓矢、琴)を持ち出し、スセリビメを背負って脱出。「お前がオオクニヌシとなり、国を治めよ!」というスサノオの豪快な認可を受け、地上の王として覚醒したのです。
【国造りと小さな相棒】
王となった彼は、海の向こうからやってきた小さな神様、少彦名命(スクナビコナノミコト)と出会います。
手のひらに乗るほど小さなスクナビコナですが、非常に知識が豊富。二柱は兄弟のように協力して全国を巡り、人々に医薬や農耕、酒造りの方法を教え、国を豊かに発展させました。
4. 【金沢での関連寺社・スポット】
金沢市内にも、オオクニヌシ(またはその別名や大黒様)をご祭神として祀る重要なスポットが点在しています。
1. 石浦神社(金沢市本多町)
- 金沢最古の神社として有名ですが、ここの主祭神は「大物主大神(オオモノヌシノオオカミ)」。これはオオクニヌシの別名、あるいはその和魂(にぎみたま)とされる神様です。
- 「縁結び」のパワースポットとして絶大な人気を誇り、恋愛だけでなく様々な良縁を結んでくれるといわれています。お守りのデザインも可愛らしく、オオクニヌシの優しさを感じられる場所です。
2. 出雲神社(金沢市西念町など)
- 金沢市内には「出雲神社」と名のつく神社がいくつか存在します(西念町、北町など)。
- 特に西念町の出雲神社では、主祭神として大国主命に加え、国造りの相棒である少彦名神(スクナビコナ)も共に祀られています。病気平癒や健康長寿を願う方には特におすすめの、地域に根ざした神社です。
3. 妙国寺(金沢市東山)
- 通称「大黒寺」。日蓮聖人が作ったと伝わる「大黒天像」が祀られています。
- 神道としてのオオクニヌシではなく、「大黒様」としての信仰に触れたい場合は、東山エリアのこちらへ足を運んでみてはいかがでしょうか。
【番外編】能登國一宮 氣多大社(羽咋市)
- 金沢市ではありませんが、石川県でオオクニヌシ(大己貴命)といえばここを外せません。
多くの気が集まる場所とされ、復縁や縁結びの聖地として全国的に有名です。
金沢観光と合わせて訪れる方も多いスポットです。
編集後記
オオクニヌシというと「因幡の白兎」の優しいお兄さんというイメージが強いですが、実は何度も死にかけたり、駆け落ち同然で奥さんを連れ出したりと、かなり波乱万丈な人生(神生?)を送っているんです。
そんな苦労を知っている神様だからこそ、私たちの悩みにも深く寄り添い、あらゆるご縁を結んでくれるのかもしれません。金沢で石浦神社や出雲神社を見かけたら、「大黒様、いいご縁をお願いします!」と手を合わせてみてくださいね。
金沢 寺社仏閣めぐり 