1. 【御利益】
- 五穀豊穣・農業守護:食物の恵みを授け、作物の実りを守ります。
- 産業振興・商売繁盛:すべての産業の発展を助け、経済的な豊かさをもたらします。
- 開運厄除・衣食住守護:日々の生活に欠かせない衣食住を満たし、災いを退けて安らかな暮らしを約束します。
2. 【概要と由来】
豊受気媛神(トヨウケビメ)は、私たちの命を繋ぐ「食」と「住」、そして産業全般を司る尊い女神です。
最も有名な鎮座地は、三重県の伊勢神宮 外宮(豊受大神宮)です。
もともとは丹波国(現在の京都府北部など)にいらっしゃいましたが、内宮に祀られている最高神・天照大御神(アマテラスオオミカミ)の強い希望により、約1500年前に伊勢へと招かれました。
「食事」は単なる栄養補給ではなく、神聖な儀式であり、生命力の源です。トヨウケビメは、アマテラスの食事を司るという極めて重要な役割を担うことで、国全体の繁栄を陰から支え続けている「縁の下の力持ち」のような存在なのです。
3. 【詳細解説】
名前とシンボル
お名前にある「トヨ」は豊かさ、「ウケ」は食物を意味します。
古語で「ウケ」や「ケ」は稲や食事を表す言葉であり、まさに豊穣そのものを体現するお名前です。 シンボルは稲穂や穀物。ふくよかで温かみのある姿で描かれることが多く、私たちがご飯を美味しく食べられるよう、常に優しく見守ってくださっています。
また、羽衣伝説に登場する天女と同一視されることもあり、神秘的な側面も併せ持ちます。
神話・エピソード:アマテラスが求めた「食のパートナー」
トヨウケビメが伊勢神宮の外宮に祀られるようになった経緯には、ある有名なエピソードがあります。
第21代・雄略天皇の夢枕に、天照大御神が現れてこう告げました。
「私は一人で食事をするのが寂しいし、安らかに食事ができない。丹波国にいるトヨウケビメを私の近くに呼び寄せてほしい」
最高神であるアマテラスでさえ、一人での食事は味気なく、心が安まらなかったのです。
この神託を受けた天皇は、すぐに丹波国からトヨウケビメをお迎えし、内宮のすぐそばに外宮を建立しました。 以来、外宮では毎日朝夕の二回、神様に食事を捧げる「日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)」が絶えることなく続けられています。
トヨウケビメは、「誰かと共に食事をする喜び」や「心を満たす豊かな時間」の大切さを教えてくれる神様です。
視野が狭くなり、不安に押しつぶされそうな時こそ、美味しいご飯をしっかりと食べる。そうして内側から元気を養うことこそが、トヨウケビメへの一番の祈りとなるでしょう。
4. 【金沢での関連寺社・スポット】
金沢市内において、トヨウケビメ(豊受姫神)にお参りできる代表的な神社をご紹介します。
神明宮(しんめいぐう)
金沢の三茶屋街のひとつ「にし茶屋街」のすぐ近くに鎮座する、歴史ある神社です。
- 御祭神:天照皇大神、豊受姫神
- 特徴:地元では「お神明(しんめい)さん」の愛称で親しまれています。ここでは伊勢神宮と同様に、アマテラスとトヨウケビメが並んで祀られています。
- 見どころ:
- あぶりもち神事:春と秋の例大祭で行われる神事。お祓いをした「あぶりもち」を食べることで、無病息災のご利益があるとされています。「食」の神様であるトヨウケビメの力が、このお餅を通じて体に宿るようです。
- 大ケヤキ:境内にある樹齢約1000年の大ケヤキは圧巻の生命力で、パワースポットとしても人気です。
- 住所:石川県金沢市野町2丁目1-8
- アクセス:北陸鉄道バス「野町」バス停下車すぐ
このほか、尾﨑神社(金沢市丸の内)の境内にある豊受稲荷社や、大額稲荷神社(金沢市大額町)でも豊受比咩命が祀られています。金沢グルメを堪能する前後に、ぜひ手を合わせてみてください。
編集後記
「一人ご飯は寂しい」とアマテラス様が仰ったという話、なんだかとても人間らしくて親しみが湧きませんか?
忙しいとつい食事を適当に済ませてしまいがちですが、トヨウケビメの記事を書きながら「今日のランチはしっかり味わって食べよう」と心に決めました。
金沢には美味しいものがたくさんあります。神明宮にお参りした後は、近くのにし茶屋街や片町で、美味しい食事を楽しんで、お腹も心も満たしてくださいね。
金沢 寺社仏閣めぐり 