1. 【御利益】
日本全国の神社の総氏神とされる天照大御神は、あらゆる願いに通じるとされていますが、特に以下の御利益が篤く信仰されています。
- 国家安泰・家内安全:家庭や組織の基盤を安定させ、平和をもたらす。
- 万能の開運・願望成就:太陽が万物を照らすように、あらゆる停滞を打破し運気を底上げする。
- 子孫繁栄:命の繋がりを守り、未来への発展を授ける。
- 勝運・出世:最高神としての威厳から、勝負事や仕事における成功を導く。
2. 【概要と由来】
天照大御神(アマテラスオオミカミ)は、日本神話において最も尊いとされる女神であり、皇室の祖神(皇祖神)です。
「古事記」においては、国生みの神である伊邪那岐命(イザナギノミコト)が、黄泉の国から戻り、左目を洗った際に生まれたとされています。
その際、イザナギから自身の首飾りを授けられ、神々が住まう世界「高天原(たかまがはら)」を治めるよう命じられました。
その名の通り「天を照らす」太陽神として、農耕儀礼や自然崇拝の中心的存在となり、現在では伊勢神宮(内宮)を総本社として全国で広く信仰されています。
3. 【詳細解説】
別名・別称
- 大日孁貴神(オオヒルメノムチノカミ)
- 天照大神(アマテラスオオカミ)
特徴・シンボル
象徴はもちろん「太陽」です。
また、三種の神器の一つである「八咫鏡(やたのかがみ)」は天照大御神の御神体として扱われます。
穏やかで慈愛に満ちた女神として描かれることが多いですが、秩序を乱すものに対しては断固たる態度をとる、威厳あるリーダーとしての側面も持ち合わせています。
神話・エピソード:天の岩戸(あまのいわと)
天照大御神を語る上で欠かせないのが、世界が闇に包まれた「天の岩戸」の物語です。
弟神である須佐之男命(スサノオノミコト)が、高天原で田んぼを壊したり神聖な機織り小屋を汚したりと、乱暴狼藉を働きました。これに心を痛め、恐れをなした天照大御神は、「天の岩戸」と呼ばれる洞窟の奥深くへと引きこもり、入り口を固く閉ざしてしまったのです。
太陽神が隠れたことで、高天原も地上の世界も完全な闇に包まれました。
悪神が跋扈(ばっこ)し、あらゆる災いが世界を襲います。
困り果てた八百万(やおよろず)の神々は、天安河原(あまのやすかわら)に集まり作戦会議を開きました。
知恵の神・オモイカネの案により、岩戸の前で盛大な宴(祭り)を開くことになります。
芸能の女神・アメノウズメが桶の上で足を踏み鳴らし、神がかった踊りを披露すると、見ていた神々は「わっはっは」と大笑いしました。
「外は暗闇のはずなのに、なぜそんなに楽しそうなのか?」
不思議に思った天照大御神がそっと岩戸を細く開けて外を覗くと、アメノウズメが「あなた様より尊い神が現れたので喜んでいるのです」と言い、鏡を差し出しました。
鏡に映る自分の光り輝く姿を新しい神だと思い込み、天照大御神がもう少しよく見ようと身を乗り出したその瞬間、力自慢のタジカラオが岩戸をこじ開け、彼女を外へと引き出したのです。
こうして世界に再び太陽の光が戻り、秩序と平和が回復しました。
この神話は、「絶望的な状況(闇)であっても、皆で知恵と力を合わせれば、必ず光は戻る」という再生の希望を私たちに伝えています。
4. 【金沢での関連寺社・スポット】
金沢市内において、天照大御神をご祭神として祀る神社はいくつか存在しますが、中でも歴史が深く、地元で親しまれている代表的な神社を紹介します。
金沢神明宮(かなざわしんめいぐう)
金沢市野町に鎮座するこの神社は、地元では「あぶりもち神事」で有名な神社として知られていますが、主祭神は天照大御神です。
社名にある「神明(しんめい)」とは、天照大御神を祀る神社の通称でもあります。
加賀藩主・前田家からの崇敬も厚く、古くから金沢の地を守り続けてきた由緒あるお宮です。
春と秋に行われる祭礼では、悪事災難を払うとされる伝統行事が行われ、多くの参拝者で賑わいます。
神明宮のすぐお隣には豪姫の菩薩寺・大蓮寺があります。
- 住所:石川県金沢市野町2丁目3-17
- アクセス:北鉄バス「野町」バス停より徒歩約3分、にし茶屋街の近くです。
全国の関連寺社
- 伊勢神宮 内宮(皇大神宮):三重県伊勢市。全国の神社の本宗であり、天照大御神を祀る最も尊い場所。
- 開成山大神宮(かいせいざんだいじんぐう):福島県郡山市。「東北のお伊勢さま」として親しまれています。
編集後記
記事を書いていて改めて感じたのは、天照大御神の「引きこもり」のエピソードの人間臭さ(神様臭さ?)です。
最高神であっても、傷ついたり、殻に閉じこもったりすることはある。
でも、外の世界の「笑い」や「仲間」がきっかけで、再び輝くことができる。
もし今、心が少し疲れている方がいたら、無理に頑張るのではなく、天照大御神のように一度ゆっくり休んでみるのも良いかもしれません。
そして、金沢の美味しいものを食べて笑えば、きっとまた「内なる太陽」が顔を出してくれるはずですよ。
金沢 寺社仏閣めぐり 