歴史・概要
宝乗寺は、今より八〇〇余年前の建久四年(1193年)、真言宗の寺院として創立され、薬師寺と命名されたのが始まりであります。
開創後約百余年を経て、直江谷の領主・井家庄太浄運の菩提寺となり、浄運は都の京都より学徳誉れ高き高僧、妙珍阿闍梨(みょうちんあじゃり)尊者を住職として迎えました。
日蓮大聖人御入滅後十三年目、永仁二年(1294年)の秋、大聖人の孫弟子・日像上人(にちぞうしょうにん)が宗祖の遺訓を捧げて布教と大聖人の霊跡巡拝を兼ね、佐渡から能登を経て上洛の途次、滝谷に妙成寺を建立、次いで加賀国に在る妙珍阿闍梨の学徳を聞かれ、当山に巡錫なされました。
その時、尊者は日像上人の卓越せる法談識見に深く感動され、帰伏して弟子となり法華経に改宗し、寺号を妙珍山宝乗寺と改めました。日像上人を開山とし、尊者が初祖となられました。
それから七〇〇余年、世代を累ぬること四十九代、法灯絶えることなく法運吉祥に法華経の霊場として今日に至っております。
従って宝乗寺は加賀国における法華経の初転法輪並びに題目初祥の霊場です。
また宝乗寺は三谷地区における教育、文化初祥の地となり、後に加賀藩、前田家の祈祷場として寺録も方八丁を賜り栄えて来ました。
宝乗寺の記録によれば、寺には宗門にまつわる貴重な品や、狩野派を始め有名作家の書画作品等多くの宝物がありましたが、残念なことに明治十七年の厄災で殆んどが焼失し、現存するのは紺紙金泥の法華経一巻、日蓮聖人の御尊像、伝承による運慶作の御仏像数体、左甚五郎作の大狛犬一対、また初代宮崎寒雉義一作の十六鐘の一大梵鐘(金沢市指定文化財)があるのみです。
広大なる境内には七面堂、八幡宮の二社が祀られ、老杉大木が多く、特に三谷の大杉として県史にある樹齢八〇〇有余年、周囲六米の御神木もあり、うっそうとして昼なお暗く、参詣の人をして自ずとその森厳さを感じさせます。
所在地
金沢市車町ハ甲103
電話
076-257-5382
拝観料金
寺院にお問合せ
拝観時間
寺院にお問合せ
宗派/山号・寺号
宗派:日蓮宗/山号:妙珍山
旧本山は大本山妙顕寺(四条門流)、奠師法縁(奠統会)
本尊・寺宝
本尊:久遠実成本師釈迦牟尼仏
寺宝:梵鐘(ぼんしょう)金沢市指定文化財
御朱印
寺院にお問合せ
行事
寺院にお問合せ
見どころ
金沢市車町にひっそりと佇む宝乗寺は、深い歴史と豊かな自然に包まれた、見どころ満載の寺院です。
訪れる人々を静謐な空間へと誘う、その魅力をご紹介します。
歴史と自然が織りなす荘厳な空間
参道入口から続く石段は、金沢市の「景観樹林」に指定されており、木漏れ日のなか、静かに心を落ち着けて歩を進めることができます。
参道を登りきると、まず目に飛び込んでくるのは八幡宮の社。さらに右手に進むと、圧倒的な存在感を放つ御神木「三谷の大杉」が現れます。推定樹齢800年余、根周り7.45メートル、高さ34.4メートルという巨木は、天に向かって真っ直ぐに伸びる力強い姿で見る者を圧倒します。
周囲の杉の巨木群も同様に直立した姿を見せており、その整然とした美しさは息を呑むほどです。
この御神木は、宝乗寺の歴史を見守り続けてきた生きた証であり、まさに圧巻の一言です。
運慶作の七面大明神を祀る七面堂
参道途中には「七面さん」として親しまれている七面堂があります。
本堂から入るように案内されているため、一度参道に戻り、改めて入口から中へ。古刹の雰囲気を色濃く残すお堂の祭壇には、運慶作と伝わる七面大明神が中央に祀られています。
その両脇にも神像が安置されており、厳かな雰囲気を醸し出しています。
七面堂の古びた建物と周囲の木々が一体となり、独特の森厳さを感じさせる空間を作り出しています。
文化財の梵鐘と清らかな水
境内には、元禄6年(1693年)に宮崎寒雉によって作られ、昭和55年(1980年)に金沢市指定有形文化財となった梵鐘があります。歴史を刻むその音色に耳を傾けてみてください。
この梵鐘には、鐘名に「元禄第六葵酉歳4月8日治工宮崎寒雉義一」とあり、宮崎彦九郎義一が寒雉銘を刻した金沢市にただ一つの作品です。義一は加賀藩5代藩主に仕えた鋳物師で、茶道奉行として京都から招かれた千仙叟の指導のもと、鋳造技術を生かして藩御用釜師となり、寒雉菴(かんちあん)の号を受け、数々の名品を残しました。
この鐘は、元禄6年(1693年)寒雉63歳の作で、一説によると現地で鋳造したと伝えられています。当時の梵鐘づくりは出職(現地作り)が多く、「越中史料」の吉野屋旧記に、安養坊山で御城の鐘を殿様の御前において金沢の釜屋彦九郎が鋳造した事が載せられています。
総高123.0センチメートル・口径70.7センチメートルと少し小振りですが、鐘の美しさは格別で、鐘の音色にも通ずるように思われます。
【金沢市ホームページより】
また、境内には七面清水(しちめんしょうず)と呼ばれる洗水と清水があり、清らかな水が訪れる人々を迎えます。
いしかわの森50選に選ばれた森
本堂の脇には、地元豪商・車屋庄右衛門の墓所へと続く石段があります。
そこを登ると、20数本の巨木が立ち並ぶ森が広がっています。この森は「いしかわの森50選」に選定されており、自然の豊かさを存分に感じられる場所です。
自然と調和する砂防ダム
さらに、駐車場奥から七面堂へと続く山道を進むと、木々に囲まれた砂防ダムを見ることができます。
自然と調和したその風景は、心を癒してくれるでしょう。
まとめ
宝乗寺は、歴史と自然が調和した、静かで落ち着いた空間です。
樹齢数百年の巨木、運慶作と伝わる仏像、文化財の梵鐘など、見どころは尽きません。
金沢を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。きっと心に残るひとときとなるでしょう。
駐車場・アクセス
・駐車場あり(住宅街の一番奥)
ウェブサイト
公式サイトはありません
この投稿をInstagramで見る