歴史・概要
前田利家の菩提寺としての創建
桃雲寺は、慶長5年(1600年)に前田利家が関ヶ原の戦いで亡くなった後、遺言により野田山に葬られました。
その菩提を弔うために、前田利長が母・芳春院(まつ)の意向を受けて、前田家重臣の神谷守孝と篠原一孝が設立した小庵を改築して寺院にしました。
開山は宝円寺二世の象山徐芸で、利家の法名・高徳院殿桃雲浄見大居士にちなんで高徳山桃雲寺と称しました。
加賀藩前田家墓所の墓守寺としての発展
桃雲寺は、藩祖・前田利家の菩提寺として、加賀藩前田家墓所(野田山)の墓守寺となりました。
芳春院は桃雲寺に深い思い入れがあり、自ら寺領を寄進したり、住持の選定に関与したりしました。
また、利家の遥拝墓や自身の葬儀も桃雲寺で行われました。
桃雲寺は、芳春院と密接な関係である篠原家や前田土佐守家などの加賀八家の菩提寺でもありました。
また、九万坊大権現を祀り信奉されていました。
明治以降の衰退と現状
明治6年(1873年)に火災により伽藍を焼失し、その後も再三にわたる縮小で往時の豪壮な姿を失いました。
現在は小さな寺となっており、本尊は釈迦牟尼仏です。
文化財として、前田利家と芳春院の画像が金沢市指定文化財になっています。
九万坊大権現については「薬王寺」のページも参照して下さい。
九万坊大権現
九万坊大権現、八万坊大権現、照若坊大権現という三柱の神様(三聖大権現)が、もともと金沢城の中に祀られていた経緯と、その後桃雲寺に移された経緯を解説します。
金沢城内での出来事
- 昔、金沢城を治めていた藩主(殿様)が城内を巡回していた時のことです。
九万坊の祠の前を通る際、家老(藩の重役)から「九万坊の祠の前では会釈(お辞儀)をして通ってください」と言われました。 - これに対し、藩主は「加賀の国の主(太守)は私である。私以外の者は出て行ってほしい」と言いました。
これは、自分がこの城で一番偉いのだから、神様にまで頭を下げる必要はない、という傲慢な態度を示したと言えるでしょう。 - するとその夜、藩主は三人の僧侶が寂しそうに加賀の国境を越えていく夢を見ました。
夢から覚めた藩主は、その三人の僧侶が九万坊たちであることに気づき、慌てて家老を派遣して連れ戻させました。これは、藩主の傲慢な態度に対し、九万坊たちが怒って出て行こうとした、という逸話として伝えられています。
黒壁山への遷座と桃雲寺への再遷座
- その後、三代藩主の前田利常公の時代に、三聖大権現は黒壁山という場所に移されました。
- しかし、明治35年(1902年)頃になると、黒壁山へ続く山道は寂しく、参拝者を脅かす悪者が出ることもあったため、再び移転が計画されました。
- その際、信者の一人である嶋田直勝(しまだなおかつ)の夢枕に九万坊が現れ、「速やかに移転するが良い。場所は野田山の桃雲寺である」と告げました。
- そこで、信者たちが相談し、桃雲寺に三聖大権現を移すことになりました。
桃雲寺は前田家歴代の菩提寺(先祖のお墓があるお寺)であるため、これも何かの縁だと考えられています。
三聖大権現のご利益
- 三聖大権現は非常に霊験あらたかで、商売繁盛、身体健勝(健康)、様々な願い事の成就など、福を招き、運を開くご加護があるとされ、多くの信者から信仰を集めています。
この話は、藩主の傲慢さに対する戒めや、神様の力、そして人々の信仰心を描いています。
特に、夢のお告げによって移転先が決まったという話は、神様の存在を身近に感じていた当時の人々の様子を伝えていると言えるでしょう。
また、前田家ゆかりの桃雲寺に祀られているという縁も強調されています。
覚尊院(かくそんいん 通称:大佛堂)について
覚尊院は、桃雲寺より約200m程離れた場所にあります。
桃雲寺創設期に同寺の大佛堂として建立されました。
歴代藩主の墓参の折、参詣、信奉されてきました。
明治に宗教法人として覚尊院と称し現在に至ります。
住所
石川県金沢市野田町チ386
電話
076-241-2576
拝観料金
本堂など伽藍内可能
拝観時間
詳しい時間は寺院にお問合せください
宗派/山号/寺号
曹洞宗/高徳山/桃雲寺
本尊・寺宝
本尊:釈迦牟尼仏
寺宝:前田利家と芳春院の画像(絹本著色前田利家・同夫人画像)が金沢市指定文化財になっています。
「絹本著色 前田利家画像」
「絹本著色 芳春院(利家夫人)画像」(伝 長谷川等伯筆)
この絵は、前田利家公と奥様(芳春院様)の肖像画が二幅一対(二枚で一組)になったもので、現在は夫婦揃って描かれていますが、もともとは別々に作られたものだと考えられています。
利家公の肖像画について
- 利家公は、格式高い正装である衣冠束帯(いかんそくたい)を身につけ、上畳(じょうじょう)という特別な畳に座った姿で描かれています。これは、神様の像と同じような描き方で、利家公を神格化して描いているとも言えるでしょう。
- 能衣(のうい:能の衣装)は墨一色で模様がなく、垂幕(たれまく)や上畳の縁にわずかに彩色が施されているのみで、県内の他の利家公の肖像画と比べると、かなりシンプルな描き方です。
- しかし、像の後ろの背景や垂幕の一部に金泥(きんでい:金箔を溶かして作った絵の具)を塗った跡が見られることから、もともとはもっと豪華で荘厳な雰囲気の肖像画だったと考えられます。時を経て、金泥が剥がれてしまったのかもしれません。
夫人(芳春院様)の肖像画について
- 夫人像には、大徳寺(京都にある有名なお寺)の161世住職である春嶽宗勝(しゅんがくそうしょう)が、慶長14年(1609年)に書いた賛(さん:絵に添えられた漢文の文章)が記されています。
- 夫人は元和3年(1617年)7月に71歳で亡くなっているので、この肖像画は芳春院様の晩年の姿を描いた寿像(じゅぞう:長寿を祝うために描かれた肖像画)であることが分かります。つまり、生前に描かれた肖像画ということです。
二つの肖像画の関係
- 最初に作られたのは夫人像で、その後、夫人の没後、江戸時代前期(17世紀前半頃)に、この夫人像に合わせて利家公の肖像画が作られたと考えられています。つまり、もともとは別々の時期に作られた肖像画を、後から夫婦の肖像画として一対にした、ということです。
まとめ
桃雲寺のこの肖像画は、利家公と芳春院様という夫婦の歴史を物語るだけでなく、肖像画の制作時期や変遷、当時の人々の信仰や価値観なども教えてくれる貴重な資料と言えるでしょう。
特に、もとは豪華だった利家公の肖像画が簡素化されている点や、夫人の死後に利家公の肖像画が作られたという点が興味深いです。
御朱印
あり
行事
- 初詣り(1月1日~3日)
- 節分会(2月3日)
- 涅槃会(3月17日)
- 九万坊春季大祭(5月17日)
- 九万坊秋季大祭(10月17日)
見どころ
利家遥拝墓
境内にある「高徳院殿贈従一位行亜相桃雲浄見公大居士」と刻まれた高さ3m強の前田利家の五輪塔。
夫人芳春院が山頂まで登るのが困難なため、当寺から山頂の墓所を拝むための遥拝墓と伝えられています。
又、遺骨あるいは遺髪を納めた利家の墓との説もあります。
島田一良らの墓について
- 明治時代に大久保利通(おおくぼとしみち)という重要な政治家が暗殺された事件がありました。
この事件に関わった人物の中に、元金沢藩士の島田一良(しまだいちりょう)を含む5人がおり、彼らのお墓も桃雲寺にあります。歴史的な出来事に関わった人物のお墓があるという点でも、桃雲寺は重要な場所と言えます。 - 三島由紀夫さんも参詣されたようです。
六地蔵について
- 仏教では、人間は死後、生前の行いによって六つの世界(六道:天上・人間・修羅・畜生・餓鬼・地獄)を輪廻転生すると考えられています。輪廻転生とは、魂が何度も生まれ変わるという思想です。
- 六地蔵は、それぞれの世界で苦しむ人々を救うために現れる地蔵菩薩です。つまり、六道それぞれに人々を救う役割を持つ地蔵菩薩がいる、ということです。
六道と六地蔵の対応
具体的には、以下の対応関係があります。
- 地獄道:檀陀地蔵(だんだじぞう) – 地獄の苦しみを救う
- 餓鬼道:宝珠地蔵(ほうじゅじぞう) – 飢えと渇きの苦しみを救う
- 畜生道:宝印地蔵(ほういんじぞう) – 動物に生まれ変わる苦しみを救う
- 修羅道:持地地蔵(じじじぞう) – 争いや怒りの苦しみを救う
- 人間道:除蓋障地蔵(じょがいしょうじぞう) – 人間世界の苦しみ(生老病死など)を救う
- 天道:日光地蔵(にっこうじぞう) – 天界の喜びから堕ちる苦しみを救う(天界も永遠ではなく、いつか堕ちると考えられているため)
お墓などで六地蔵を見かけるのは、亡くなった人々がどの世界に生まれ変わっても救われるように、という願いが込められているためです。
寺院写真
大通りに面した入口があります。
左横にはバスが停められる大きな駐車場もあります。
左側には「九万坊大権現」の文字が刻印されて
右側には「徳山桃雲寺」の文字があります。
新しい本堂が朝日に照らされて綺麗です。
右側にはお地蔵さんが並んでらっしゃいます。
左側には九万坊大権現の鳥居があり、
雰囲気のある拝殿です。
少しだけ中を見ることができました。
この板には何が書かれているのでしょうか?
空気が澄んでいて気持ちがいい境内です。
ゆっくり参拝して、墓地の方も拝観したいなと思いました。
駐車場・アクセス
駐車場あり。
中型バス可。本堂⼿前、本堂裏の⼆箇所。
金沢駅からバスで約20分。
野田町バス停下車、徒歩約5分。
ウェブサイト
公式サイト:http://koutokuzan-tonji9.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/kumambotonji/
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