1. 【御利益】
ツクヨミは、月の満ち欠けや夜を司ることから、私たちの生活のリズムや精神的な安らぎ、そして海に関連するご利益を授けてくださいます。
- 海上安全・大漁満足 (月の引力が潮の満ち引きを司ることから、海に関わる仕事や航海の安全を守ります)
- 五穀豊穣・商売繁盛 (古くから月の満ち欠けは農業(暦)の基準でした。そこから実りを約束し、事業の発展を導くとされています)
- 心願成就・安産祈願 (満ちていく月のように、願いが成就へ向かう力や、新しい命の健やかな成長を見守ります)
- 陰の努力の実り・開運 (人知れず積み重ねた努力を認め、運気を切り開く力を与えてくれます)
2. 【概要と由来】
ツクヨミ(月読命・月弓尊)は、日本神話における「夜の国」の支配者であり、月の化身とされる神様です。
伊耶那岐命(イザナギノミコト)が黄泉の国から戻り、穢れを祓うために禊(みそぎ)を行った際、右目を洗ったときに生まれました。左目から生まれた太陽神「アマテラス」、鼻から生まれた荒ぶる神「スサノオ」と共に、最も尊い「三貴子(さんきし)」の一柱として数えられます。
太陽のように華々しく照らすアマテラスとは対照的に、ツクヨミは静寂の中に身を置き、世界を陰から支える存在として、古くから信仰を集めています。
3. 【詳細解説】
別名・別称
- 月読命(ツクヨミノミコト)
- 月弓尊(ツクユミノミコト)
- 月夜見命(ツキヨミノミコト)
特徴・シンボル
夜空に静かに輝く「三日月」や「満月」がシンボルです。
絵画などでは、農耕や狩猟、あるいは暦を司ることを象徴する「杖」や「矛」を持った姿で描かれることが多く、冷静で思慮深い顔立ちをしています。
神話・エピソード:静かなる夜の守り人
ツクヨミに関する神話は、姉のアマテラスや弟のスサノオに比べると多くはありません。
しかし、その「語られなさ」こそが、この神様の神秘性を高めています。
有名なエピソードの一つに、姉のアマテラスと決別し、昼と夜が分かれるきっかけとなった物語があります(日本書紀)。
ある時、アマテラスの命を受けて、ツクヨミは穀物の神であるウケモチのもとを訪れました。ウケモチは口から様々な食べ物を出して持て成しましたが、ツクヨミは「汚らわしい」と怒り、その剣でウケモチを斬ってしまいます。
これを知ったアマテラスは激怒し、「あなたとはもう顔を合わせたくない」と告げました。
それ以来、太陽(昼)と月(夜)は別々の空に現れるようになったといわれています。
この神話は少し恐ろしく聞こえるかもしれませんが、一方でツクヨミは「善悪の判断を厳格に行う」「自分の信念に従う」という強い意志の表れとも解釈されます。
また、ツクヨミは「占い」や「暦」を司る知的な神でもあります。
華やかな表舞台ではなく、「誰も見ていない場所で、淡々と自分の役割を果たす」ことの尊さを教えてくれる存在です。
マネージャーや秘書、職人など、陰で組織や人を支える「縁の下の力持ち」の方にとって、これほど心強い味方はいないでしょう。
4. 【金沢での関連寺社・スポット】
金沢市内において、ツクヨミを「主祭神」として単独で祀る大きな神社は、実は見当たりません。
しかし、この街にはツクヨミを感じられる場所や、深い縁(ゆかり)を持つ家族の神様がたくさんいらっしゃいます。
① 月照寺(げっしょうじ)
- 所在地: 金沢市東山(卯辰山山麓)
- 解説: 神社ではなくお寺ですが、その名の通り「月が照らす」という美しい名を持つ曹洞宗の寺院です。
ツクヨミそのものではありませんが、月を愛でる心、静寂な夜の安らぎを感じるには最適なパワースポットです。
卯辰山から見上げる月は格別で、ツクヨミの静かなる加護を感じられるかもしれません。
② 金沢神明宮(かなざわしんめいぐう)
- 所在地: 金沢市野町
- 解説: ツクヨミの姉神である「天照大御神(アマテラス)」を主祭神として祀る、金沢五社の一つです。あぶり餅神事でも有名です。
姉神にご挨拶することで、その弟神であるツクヨミとも精神的な繋がりを持つことができます。「兄弟仲良く見守ってください」とお祈りしてみてはいかがでしょうか。
③ 宇多須神社(うたすじんじゃ)
- 所在地: 金沢市東山(ひがし茶屋街近く)
- 解説: こちらはツクヨミの弟神である「須佐之男命(スサノオ)」とも縁が深い神社(主祭神は高皇産靈神などですが、明治期にスサノオを祀る卯辰八幡宮が遷座・合祀された歴史を持ちます)。
三貴子(アマテラス・ツクヨミ・スサノオ)の家族の絆を感じながら、ひがし茶屋街の散策と合わせて参拝するのがおすすめです。
【番外編】少し足を延ばして…
もしお時間があれば、金沢の隣、小松市には「月読神社(小松市桂町)」が鎮座しています。
石川県内でも数少ない、ツクヨミを主祭神とする貴重な神社です。
全国の有名な関連寺社
- 月読神社(京都府・松尾大社 摂社): 暦や酒造りの神としても有名。
- 月山神社(山形県・出羽三山): 修験道の聖地であり、月山山頂に鎮座します。
- 月讀宮(三重県・伊勢神宮 別宮): 内宮・外宮それぞれにツクヨミを祀る別宮があります。
編集後記
「誰も見ていないところでこそ、努力する」。
今回の記事を書きながら、私自身も背筋が伸びる思いでした。
SNSでキラキラした部分ばかりが目につく現代ですが、ツクヨミのように「静かなる強さ」を持つことのかっこよさに惹かれます。
金沢の夜、空を見上げて月が出ていたら、ぜひこの神様のことを思い出してみてください。
きっと、あなたの毎日の頑張りを、優しい光で見守ってくれているはずです。
金沢 寺社仏閣めぐり 